移動時間は労働時間になるのか?

所定労働時間の前後に、仕事の目的地まで行くための移動時間は、労働時間になるのでしょうか?

答えは、「条件によって異なる」です。

労働時間になる場合ならない場合

労働時間になる場合

  • 移動中に会社から用務を命じられている場合
    • 車両の運転など
  • 所定労働時間内に目的地に移動する場合
  • 会社に戻った後、業務が義務付けられている場合
    • 片付け作業、点呼など

労働時間にならない場合

  • 通勤時間
    • 自宅から現場に直行する場合
    • 現場から自宅へ直帰する場合
  • 出張中の移動時間

労働時間にならない場合

通勤時間

通勤時間は労働時間ではありません。

自宅から最初の営業先へ直行する場合の移動時間も通勤時間であり労働時間ではありません。

出張中の移動時間

出張中の移動時間も労働時間ではありません。

出張中の移動時間は、その間具体的な業務が無く自由に過ごせる場合は、拘束時間ではありますが、労働時間ではありません。休憩時間のような考え方です。

建設工事の現場への移動

建設業などでは、会社に一度立ち寄ってから工事現場に行くケースが多く見られます。

会社から工事現場までの移動時間が労働時間になるかどうかは内容によります。

いくつかパターンが考えられます。

  • 自宅から現場へ直行または直帰する場合
  • 会社に一度立ち寄る場合
    • 会社が「自宅から現場への行き帰りの間に、会社へ立ち寄ること」を指示している場合。
    • 従業員が自主的に会社に立ち寄る場合

直行直帰の場合

自宅から現場へ直行・直帰する場合、自宅と現場の間の移動時間は通勤時間であり労働時間ではありません。

会社に一度立ち寄る場合

会社が立ち寄りを指示している場合

会社が自宅と現場の間に会社へ立ち寄ることを指示している場合には、会社と現場の間の移動時間は労働時間になります。

会社に立ち寄った後の移動手段として、マイクロバスなどでみんなで現場に行くパターンと個別に現場に行くパターンがあります。

マイクロバスなどで現場に行く場合であっても、運転手以外の従業員の移動時間も労働時間となります。

移動時間中の賃金については、労使間の合意があれば、現場での労働についての賃金よりも低い賃金設定をしたり、運転手とそれ以外の従業員で賃金に差をつけることも可能ですが、一般的には行われていません。

自宅から会社までの間の移動は通勤時間になり、労働時間ではありません。

従業員が自主的に会社に立ち寄る場合

従業員が任意で会社に立ち寄った場合は、移動時間は労働時間になりません。

現場までの移動に使用する車に業務で必要な道具が積んである場合には、労働時間として扱われる可能性が高くなります。

参考

総設事件(東京地裁 判決 平成20.2.22)

阿由葉工務店事件(東京地裁 判決 平成14.11.15)

労働判例

  • 総設事件 労働判例966号 51頁
  • 阿由葉工務店事件 労働判例836号 148頁