ダブルワーク(兼業・副業)と割増賃金の支払
- 2017.12.06
- 労働時間・休憩・休日・休暇
- 労基法
労働時間の通算
従業員がダブルワークなど複数の事業場で働いている場合、それら全ての事業場での労働時間を通算します。
通算して求められた労働時間が1週40時間、1日8時間を超えた場合には、割増賃金の支払い義務が生じます。
この事業場とは、同一事業主による事業場だけではなく、事業主が異なる場合も含みます。
第三十八条 労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。
労働基準法 第38条
「事業場を異にする」とは、労働者が1日のうち、甲事業場で労働した後に乙事業場で労働することをいう。この場合、同一事業主に属する異なった事業場において労働する場合のみでなく、事業主を異にする事業場において労働する場合も含まれる。
昭23.5.14 基発 第769号
割増賃金の支払義務があるのはどの事業主か
従業員がダブルワークなど複数の会社で勤務し、通算すると1日8時間を超える労働時間になる場合、どの会社に割増賃金の支払い義務があるのでしょうか?
原則は後から使用(労働契約)した側に割増賃金の支払義務
どの事業場(主)に割増賃金の支払義務があるかというと、原則として、時間的に後から労働契約を締結した事業主となります。
例
A社(先に契約)、B社(後に契約)
A社で6時間の労働後、B社で3時間の労働→B社の1時間は割増賃金が必要
A社で8時間の労働後、B社で2時間の労働→B社の2時間は全て割増賃金の支払いが必要
時間外労働についての法所定の手続をとり、また割増賃金を負担しなければならないのは、右の甲乙いずれの事業主であるかが問題となるが、通常は、当該労働者と時間的に後で労働契約を締結した事業主と解すべき労働法コンメンタール
例外もあります
先に契約している側がダブルワークをすることを把握していて、その合計労働時間が法定内時間に収まっていることを知っていた場合は、例外が発生します。
先に契約している側が所定労働時間よりも長く労働させたことで通算労働時間が法定労働時間を超過した場合には、原則とは異なり、先に契約している側に割増賃金の支払義務が発生することになります。
原則の場合、後から契約する事業主は、「労働者が他の事業場で労働していることを知りながら、契約を締結する」立場にあるため、「時間的に後から労働契約を締結した事業主」に割増賃金の支払義務が生じます。
しかし、ここでの例外のように、先に契約している側が次の3つを満たす場合には、例外として先に契約している側であっても割増賃金の支払が必要になります。
- ダブルワークを把握
- 通算労働時間が法定労働時間内に収まる事を把握
- 所定よりも長く労働させたため、通算労働時間が法定労働時間を超過
ただし、甲事業場で4時間、乙事業場で4時間働いている者の場合、甲事業場の使用者が、労働者がこの後乙事業場で4時間働くことを知りながら労働時間を延長するときは、甲事業場の使用者が時間外労働の手続を要するものと考えられる。すなわち、「その労働者を一定時間以上使用することにより、時間外労働させることとなった使用者が違反者となる。必ずしも1日のうちの後の時刻の使用者でもないし、また後から雇入れた使用者でもない。」
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