年次有給休暇

目次

年次有給休暇の付与対象者

有給休暇は、算定期間の出勤率が8割以上の労働者に対して付与する必要がある。

出勤率の要件を満たせば、パート・アルバイトにも年次有給休暇を与える義務がある。
ただし、パート・アルバイトのように所定労働時間が短い労働者の場合は与える日数が少なく設定されている(比例付与

出勤率

出勤率の算定期間

  1. 雇入れから6か月間
    • 最初だけ6か月間
  2. 雇入れから6か月を超えた日から起算し、1年間
  3. 以後1年間ずつ

出勤率の計算式

出勤率 = 出勤日数 ÷ 全労働日

全労働日

全労働日とは、就業規則その他によって定められた所定休日を除いた日のこと

全労働日 = 総暦日数 - 所定休日
  • 全労働日から除外する日(分子、分母共に除外する)
    • 使用者の責に帰すべき事由によって休業した日
    • 正当なストライキその他の正当な争議行為により労務の提供がまったくなされなかった日
    • 所定休日の労働
      • 就業規則等で休日とされている日に、労働させた日
    • 休日
      • アルバイト従業員の本来の休日を欠勤として考え、全労働日に入れる間違いが見られるので注意

出勤日

  • 出勤日に含める日(分子、分母共に含める)
    • 業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
    • 産前産後休業
      • 産前産後の女性が労基法法第65条の規定により休業した日
    • 育児休業または介護休業した日
      • 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づくもの
    • 年次有給休暇を取得した日

出勤日と労働日まとめ

出勤日 労働日
使用者の責による休業 × ×
正当なストライキその他正当な争議行為により、労務の提供をしなかった日 × ×
労働基準法第37条3の代替休暇 × ×
業務上の負傷・疾病等により療養のため休業した日
産前産後休業をした日(労基法 第65条)
育児休業または介護休業した日
年次有給休暇を取得した日
労働者の責に帰すべき事由でない不就労
(解雇無効の場合の解雇日から復職日までなど)
所定の労働日
遅刻・早退の日
所定の休日 × ×
所定の休日に労働した日 × ×
不可抗力により就労できなかった日(天災事変等) × ×
休職期間 × ×
正当でないストライキ等により、労務の提供をしなかった日 ×
通勤災害により休業した日
慶弔休暇を取った日
子の看護休暇
介護休暇
生理休暇を取った日
公民権を行使した日
裁判員制度

出勤日△ → 会社で定めることが可能。出勤日としない場合は、全労働日からも除外する。
出勤日◎ → 出勤した日とみなす。

年次有給休暇の付与日数

通常

付与日数
勤務年数(年) 0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
付与日数(日) 10 11 12 14 16 18 20

所定労働日数が少ない者(パートなど)への付与日数 比例付与

所定労働時間が30時間未満の場合

所定労働時間
週30時間未満
勤務年数(年)
0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5
週所定労働日数 年間所定労働日数 付与日数
4日 169~216日 7 8 9 10 12 13 15
3日 121~168日 5 6 6 8 9 10 11
2日 73~120日 3 4 4 5 6 6 7
1日 48~72日 1 2 2 2 3 3 3

年次有給休暇を使用したときの賃金はいくらか

年次有給休暇を使用した時の賃金の計算方法は、3種類

  • イ)平均賃金(過去3ヶ月の賃金総額÷その期間の総歴日数)
  • ロ)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • ハ)健康保険の標準報酬日額(標準報酬月額÷30日)

原則として、イ)またはロ)のどちからを選択して就業規則等で定めなければならい。
(その都度方法を変えることは認められていない。)

労使協定を締結することで、ハ)を選択することが可能。

日によって労働時間が異なる時給制の従業員労働者の場合

例えば、所定労働時間が

  • 8時間:月・火・水・金
  • 4時間:木・土

の場合に、年次有給休暇を1日使用した場合の賃金は

計算方法に、通常の賃金を使う場合

月・火・水・金:時給×8時間分
木・土:時給×4時間分
であり、年次有給休暇を使用する日の所定労働時間により支払う金額が変わる。

従業員からすると、所定労働時間が長い日に年次有給休暇を取得した方が得になる。

計算方法に、平均賃金または標準報酬日額を使う場合

所定労働時間の違いとは関係なく各日一律の賃金となるので、年次有給休暇を取得する日によって損得は生じない。

平均賃金を使う場合は、都度平均賃金を計算する必要があるので、給与計算が煩雑になる。

年次有給休暇の計画的付与

  • 各人が持つ年次有給休暇のうち5日を超える部分について、使用者側があらかじめ日にちを指定して取得させることができる。(労基法第39条)
    • 最低5日分は、労働者が自由に利用できるように確保しておく必要がある
  • この制度を利用するには、労使協定の締結が必要
  • 原則、計画付与で指定した年次有給休暇を使用者や労働者の都合で一方的に変更することはできない

計画的付与の場合には、労働基準法第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない。(昭和63.3.14 基発第150号、婦発第47号)

「前年度からの繰り越し:7日 今年度の付与:14日」の場合

今年度に取得できる日数は、21日(7+14)なので
今年度、計画的付与の対象とすることができるのは、16日(21-5)分

労使協定に定める内容

  1. 計画的付与の対象者(あるいは対象から除く者)
  2. 対象となる年次有給休暇の日数
  3. 計画的付与の具体的な方法
  4. 対象となる年次有給休暇を持たない者の扱い
  5. 計画的付与日の変更

退職予定者

退職予定日より後の日に計画付与された分は、計画付与がなかったものとして、退職日前に使用(請求)できる。
退職予定者については、退職後に付与が計画されていても有給休暇の使用が不可能であるため。

年次有給休暇と産前休業、育児休業

産前・産後休業、育児休業

産前の休業や育児休業の期間に年次有給休暇を使用するためには、休業に入る前に請求しておく必要がある。

  1. 法定の年次有給休暇(以下「年次有給休暇」)は、労働者本人が希望する日に与える事が原則。
  2. 労働義務がない日には請求(使用)できない。
    • 労働義務が無い日:既に休む日が確定している休日・休暇・休業日など

産前の休業や育児休業と年次有給休暇のどちらを使うかは、労働者が選択できる。
産後休業中に関しては、労基法上労働が認められないので、選択の余地は無い。(年次有給休暇を請求できない)

産前の休業や育児休業を申し出ると、その期間は「労働義務がない日」となり、年次有給休暇を請求できなくなる。
既に休業に入っている場合に、後から年次有給休暇の請求を申し出ても、既に労働が免除となっているので、使用者は拒否ができる。
そもそも請求できない。

計画付与に関して

次のような労働者がいる場合は、労使協定で計画的付与の対象から外しておく

計画的付与の時季に、

  • 休業に入ることがわかっている者
    • 育児休業
    • 産前休業
  • あらかじめ退職することがわかっている者
    • 定年退職
    • 退職願が出されている
    • 休職期間が満了し、退職する

有給休暇の買取

労基法上、年次有給休暇の買い取りは禁止されている。
ただし、時効となり消化し切れなかった分を買い取ることまでは禁止されていない。
従業員の退職時に余った有給休暇の買い取りも可能。

また、法律で定められた日数以上の有給休暇を付与している場合は、超過している分の買い取りは可能。

有給休暇を買い取る場合の単価は?

時効となり消化し切れなかった分の有給休暇は、買い上げることが可能。
この場合の単価については、企業で任意に決めることができる。

例えば・・・

  • 全員一律1時間1000円
  • 買取時の時間給

退職時の有給休暇の買い取りの取扱い

基本的には退職所得として処理する。税理士に確認するのが良い。

法第30条《退職所得》関係|通達目次 / 所得税基本通達|国税庁

時効分の有給休暇の買い取りの取扱い

税務的には、給与所得として扱う。

Q従業員から、退職日までに使いきれない年次有給休暇を買い取って欲しいと要望された。

買い取りに応じないといけないのか。

A 買い取る必要はない

その他補足

年次有給休暇使用の申出期限

年次有給休暇使用予定日の一定日数前に時季指定(年次有給休暇使用の請求)を行うことを要求することは、合理的理由があれば適法。

半日単位での使用

半日単位での使用を許可する義務はない。

1労働日を単位とするものであるから、使用者は労働者に半日単位で付与する義務はない
(昭和24.7.7 基収第1428号、昭和63.3.14 基発第150号)

休職期間中に年次有給休暇は使用できるのか?

病気や怪我などで休職が発令された場合、労働が免除されることになり労働日ではなくなるため、休職が発令した後は年次有給休暇の使用を請求することはできない。

派遣労働者の年次有給休暇の取得時季を派遣先が変えられるのか?

年休は、使用者の事業の正常な運営を妨げる場合に限り、請求された日を他の日に変更することが可能(時季変更権)。
派遣社員の場合、事業の正常な運営を妨げられるかどうかの判断は、「派遣元」にあり、派遣先が時期変更健を行使することはできない。

この場合の対応としては、次のようになる

  1. 派遣会社に代替の派遣社員を探してもらう
  2. 代替の派遣社員が手配できない場合は、自社内で業務の調整を行う

 

参考

さらっと書いてしまった計画的付与と退職者についてこちらに書きました。