未成年者・年少者の雇用
- 2018.10.08
- 労働時間・休憩・休日・休暇
- 労基法
未成年者の雇用に関しては、法律が複雑です。
未成年者の定義
児童:満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者
年少者:満18歳未満の者
未成年者:満20歳未満の者
未成年者 | 年少者 | 児童 | 満15歳最初の3/31まで |
満18歳未満 | |||
満20歳未満 |
未成年者の使用と年齢制限
使用できる年齢には、満15歳の4/1を境にして大きな壁があります。
- 児童(15歳の最初の3/31までの者):原則使用不可
- 児童を除く年少者(15歳の最初の4/1以降の者):原則使用可
児童(15歳最初の3/31までの者)
児童は、原則として使用できません。
要件を満たす場合には、例外的に使用できます。例外の要件は、13歳を境に異なります。
例外として使用できる場合
13歳未満の者
次の要件を満たした上で、映画の製作または演劇の事業にのみ使用できます。
- 非工業的事業である
- 児童の健康及び福祉に有害でない
- 労働が軽易である
- 修学時間外での使用
- 行政官庁の許可を得ている
13歳以上15歳の最初の3/31までの者
15歳の最初の3/31までの者とは、正確には満15歳に達した日以後最初の3月31日が終了するまでの者のことです。中学校卒業前までの人をイメージすると分かりやすいと思います。
13歳以上15歳の最初の3/31までの者については、おおむね中学生をイメージすると分かりやすいです。
この層の者を使用する場合には、上の13歳未満の者の層と比べて要件が緩和されます。
次の要件を満たす場合のみ使用することができます。
- 非工業的事業である
- 児童の健康及び福祉に有害でない
- 労働が軽易である
- 修学時間外での使用
- 行政官庁の許可を得ている
この5つの要件は、13歳未満の者を使用する場合と同じ要件です。13歳未満の者の場合と異なり、映画の製作や演劇の事業にのみに限定されていません。
(最低年齢)
第五十六条 使用者は、児童が満十五歳に達した日以後の最初の三月三十一日が終了するまで、これを使用してはならない。
○2 前項の規定にかかわらず、別表第一第一号から第五号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満十三歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満十三歳に満たない児童についても、同様とする。(労働基準法 第56条)
年少者(児童を除く)
15歳の最初の4/1以降、18歳未満の者
15歳の最初の4/1以降の者とは、正確には満15歳に達した日以後最初の4月1日が経過した者のことです。中学校卒業後の人をイメージすると分かりやすいと思います。
高校生を雇い入れる場合に該当する可能性が高いです。
15歳の最初の4/1以降にある者については、原則としてどのような事業にでも使用することができます。ただし、年少者(満18歳未満の者)には就労できる業務に制限があります。
例外として使用“できない”業務
満18歳未満の者については、次のような業務に就かせることはできません。
- 危険な業務
- 有害な業務
- 有害な場所での業務
- 坑内での業務
(危険有害業務の就業制限)
第六十二条 使用者は、満十八才に満たない者に、運転中の機械若しくは動力伝導装置の危険な部分の掃除、注油、検査若しくは修繕をさせ、運転中の機械若しくは動力伝導装置にベルト若しくはロープの取付け若しくは取りはずしをさせ、動力によるクレーンの運転をさせ、その他厚生労働省令で定める危険な業務に就かせ、又は厚生労働省令で定める重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
○2 使用者は、満十八才に満たない者を、毒劇薬、毒劇物その他有害な原料若しくは材料又は爆発性、発火性若しくは引火性の原料若しくは材料を取り扱う業務、著しくじんあい若しくは粉末を飛散し、若しくは有害ガス若しくは有害放射線を発散する場所又は高温若しくは高圧の場所における業務その他安全、衛生又は福祉に有害な場所における業務に就かせてはならない。
○3 前項に規定する業務の範囲は、厚生労働省令で定める。
(労働基準法 第62条)
(坑内労働の禁止)
第六十三条 使用者は、満十八才に満たない者を坑内で労働させてはならない。(労働基準法 第63条)
罰則あり
これらの制限に関して違反している場合は、罰金などの罰則があります。事業主が知らなかったと主張しても、雇入れの際に履歴書や身分を証明するものの提出を求めていない場合には、違法とされる可能性が高くなります。
ここまでのまとめ
ここまでを整理してみると
年齢 |
原則 |
例外 |
例外の条件 |
|
13歳未満 |
使用不可
|
表右の条件のもと、使用可 | 非工業的事業
児童の健康及び福祉に有害でない 労働が軽易 修学時間外での使用 行政官庁(労基署)の許可 |
映画の製作または演劇の事業のみ |
13歳~15歳3/31 |
||||
15歳4/1~18歳 |
使用可 |
表右の業務は不可 | 危険な業務
有害な業務 有害な場所や坑内での業務 |
年少者を使用するために必要な証明書
年少者(満18歳未満)を使用する場合には、事業場に一定の書類の備え付けが必要になります。
15歳の4/1以降、満18歳未満までの者を使用する場合
- 年齢を証明する戸籍証明書
15歳の3月31日が終了するまでの者を使用する場合
- 年齢を証明する戸籍籍証明書
- 修学に仕事がさしつかえないことを証明する学校長の証明書
- 親権者または後見人の同意書
労働条件
未成年者の労務で一番複雑なところです。
労働時間
15歳の3/31までの者
1週:修学時間を合算して40時間
1日:修学時間を合算して7時間
修学時間を合算してに関しては、中学校までは義務教育ですので、修学の時間も労働だと考えればわかりやすいです。なお、修学時間は、授業開始時刻から同日の最終授業終了時刻までの時間から、休憩時間を除いた時間のことです。
15歳の4/1以降の者
1週:40時間
1日:8時間
成人と同じです。
時間外労働・休日労働の制限
年少者(18歳未満)には、原則として時間外労働や休日労動をさせることができません。
法定内残業や法定外の休日労働は可能です。
休日の振替と代休
休日を振り替えることもできます。
この場合、あらかじめ振替日を特定する必要があります。ただし、週40時間以内でないといけないので注意が必要です。
代休はできません。
後日実際に代休が与えられたとしても、認められていません。
変形労働時間制やフレックスタイム制の制限
年少者(18歳未満)には、原則として変形労働時間制やフレックスタイム制などを適用できません。
ただし、満15歳以上で満18歳に満たない者については、以下のいずれかの場合には変形労働時間制を適用することができます。
- 1週40時間以内で、1週間のうち1日の労働時間を4時間以内に短縮する場合において、他の日の労働時間を10時間まで延長する場合
- 1週48時間、1日8時間以内で、1か月または1年単位の変形労働時間制を適用する場合
なお、15歳の3/31までにある児童の法定労動時間は、修学時間を通算して1日7時間、1週40時間です。上の労働時間に書いたとおりです。
臨時の場合の時間外労働・休日労働は可能
災害その他避けることのできない事由によって臨時の必要がある場合や公務のため臨時の必要がある場合には、18歳未満であっても時間外・休日労働を行わせることができます。
深夜労働の制限
年少者(満18才未満)を深夜に使用できません。
深夜時刻とは、通常、22:00~翌朝5:00のことですが、児童(15歳3/31までの者)については、20:00~翌朝5:00までのことを指します。
深夜時刻 |
|
満15歳最初の3/31まで |
20:00~翌朝5:00 |
満15歳最初の4/1~ |
22:00~翌朝5:00 |
生放送のテレビ番組などで、小中学生タレントが途中で帰ってしまうのを見たことがあるかもしれませんが、この規制によるものです。
深夜労働の制限の例外
- 18最未満を深夜に使用することができませんが、交替制によって使用する満16才以上の男性は深夜に使用できます。15歳の4/1以降の者ではないので注意が必要です。
- この場合に、厚生労働大臣が認めたときは、深夜の時刻を23:00~6:00とすることができます。児童については21:00~6:00を深夜業とみなすことができます。
- 交替制を行っている会社では労働基準監督署の許可を得て、22:30まで働かせ、5:30から働かせることができます。
- 災害等の理由によって臨時の必要がある場合には、深夜に使用することができます。また、農林水産業・保健衛生業・電話交換の業務に従事する場合にも深夜の労働が可能です。
- 時間外労働・休日労働と異なり、公務のため臨時の必要がある場合であっても深夜に使用することはできません。
深夜労働のまとめ
背景の色
赤:使用不可
黄:原則不可、要件を満たす場合のみ使用可
緑:原則使用可、一定の場合は不可
青:使用可
5:00(※)~20:00 | 20:00~21:00 | 21:00~22:00 | 22:00~
22:30 |
22:30~
23:00 |
23:00~
5:00(※) |
|
13歳未満 | 映画の制作又は演劇の事業のみ可能
・有害でない ・労働が軽易 ・修学時間外 ・行政官庁(労基署)の許可 |
映画・演劇のみ
厚生労働大臣認めれば可 |
使用不可 |
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13歳~
15歳3/31 |
非工業的事業のみ可能
・有害でない ・労働が軽易 ・修学時間外 ・行政官庁(労基署)の許可 |
軽易な事業のみ
厚生労働大臣が認めれば可 |
使用不可
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15歳4/1~16歳未満 |
就業可 危険・有害・坑内はダメ |
ロ)交替制の会社で労基署の許可があれば可 |
使用不可 |
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16歳~
18歳未満 |
就業可 危険・有害・坑内はダメ |
イ)交替制の男性は可
ロ)交替制 の会社で労基署の許可があれば可 |
イ)交替制の男性は可 | |||
18歳以上 |
就業可 |
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※厚生労働大臣の許可を得て、夜間の就労可能時間を延長する場合には、午前6時となります。 |
複雑な票になりましたが、実務では、高校生の内18歳になっていない者を使用する場合には、深夜労働が原則ダメだと考えておけば良いです。また、時間外労働・休日労働もダメです。
18歳というと、高校3年生になってから迎える誕生日で18歳になるケースが一般的です。
賃金の直接払い
使用するのがたとえ児童であっても、賃金は直接本人に支払われなければなりません。親権者や後見人に支払うことはできません。
参考
年少者の労務に関しては、以前にも未成年者を使用する際には法律上の保護に注意(年少者等)で書いたのですが、年少者の件はすぐ忘れてしまうので、再度書きました。
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