解雇

解雇

解雇概要

  1. 解雇制限
    1. 解雇自体行うことができない期間がある
  2. 解雇の予告
    1. 解雇する際には労働者へ解雇する旨を予告する
  3. 解雇予告手当
    1. 解雇の予告から解雇日までに30日の期間がない場合、解雇予告手当を支払う必要がある。

解雇制限

解雇制限期間

解雇自体行うことができない期間がある。
ただし、解雇の予告は可能。この場合、解雇制限期間が終了後に解雇となる。

  1. 業務上災害により療養のため休業する期間とその後の30日間の解雇(労基法第19条1項)
  2. 産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇(労基法第19条1項、第65条)

余談:社会保険労務士試験では、「ぎょうさん散々」なんて覚えたりする。

出産とは

出産とは、妊娠4か月以上のもので、死産・生産を問わない。
1か月を28日で換算し、85日以上の妊娠によるものを出産と呼ぶ。
85日 = 28日 × 3か月 + 1日

「妊娠4ヶ月以上(1ヶ月を28日として計算とし、85日以上)の分娩とし、生産のみならず死産を含む」
(昭23.12.23 基発第1885号)

解雇の予告

解雇が可能な場合でも、解雇する際には労働者へ解雇する旨を予告する必要がある。

労働者を解雇しようとする少なくとも30日前に予告をしなければならない(労基法第20条1項)

  • 解雇の予告は、解雇日について日にちを特定しておかなければならない。
  • 30日間は暦日で計算。(休日や休業日を含める)
  • 解雇の予告自体は口頭で行っても良いが、トラブルを防ぐためにも書面を交付するのが望ましい。
  • 解雇の予告を郵送によって行う場合は、投函した日ではなく相手方に郵便が到着した日が解雇予告日となる(民法97条)

解雇予告制度の除外

下記の場合は、解雇予告の制度が除外されている。

  • 日々雇い入れられる者
    • 1か月を超えて引き続き使用される場合を除く
  • 契約期間が2か月以内の者
    • 所定契約期間を超えて引き続き使用される場合を除く
  • 4か月以内の季節的業務に使用される者
    • 所定契約期間を超えて引き続き使用される場合を除く
    • 季節的労働とは、夏期の海水浴場の業務、農業の収穫期の手伝い、冬の除雪作業などが該当する。(労働基準法第21条)
  • 試用期間中の者
    • 14日を超えて引き続き使用される場合を除く

解雇予告手当

解雇の予告は30日前までに行わなければならないが、即日解雇等で解雇の予告から解雇日までに30日の期間がない場合には、解雇予告手当を支払うことで日数を短縮することができる。

  • 1日につき、平均賃金の1日分

日数の計算

何日前の予告か(A) = 解雇日 - 解雇予告の日
解雇予告手当の支払が必要な日数 = 30 - A

解雇日 解雇予告日 解雇予告手当 何日前の予告か
日数 計算式 日数(A) 計算式
8/31 8/1 不要 30 - 右記A 30日前 31-1=30
8/15 14日分 30 - 右記A 16日前 31-15=16
8/31 30日分 30 - 右記A 即日 31-31=0
9/15 8/20 4日分 30 - 右記A 26日前 15+31-20=26
9/1 16日分 30 - 右記A 14日前 15-1=14

解雇予告手当と税金

解雇予告手当は、税金上は退職所得として扱われる

解雇予告手当の支払と解雇の有効性と

予告手当を支払うことで、労基法(第20条)違反にならないが、解雇が有効か無効かという民事上の判断は別のもの。

つまり刑事罰(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金、法第119条)は受けないが、そもそも解雇が無効であることもある。

解雇予告手当を支払わなくてもよい場合

以下の場合、労働基準監督署長の認定を受けることで、解雇予告手当を支払わずに即時解雇が可能。

  • 天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責に帰すべき事由によって解雇する場合

天災事変その他やむを得ない事由

事業所が火災で消失してしまった、大地震によって倒壊してしまったというような場合を指し、税金の滞納処分を受けて事業廃止に至った場合や、事業主のミスで資金繰りがつかなくなり操業ができなくなったというような場合は含まれない(昭63.3.14 基発150号)

労働者の責に帰すべき事由

労働契約の履行に関わって、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほどの重大なまたは悪質な義務違反ないし背信行為が労働者に存する場合。

  • 犯罪に該当する行為を行った
  • 2週間以上も無断欠勤した
  • 会社の信用や名誉を著しく失墜させるような行為を社外で繰り返した
    (昭和23.11.11 基発1637号)

解雇の種類

解雇には3つの種類がある。

  1. 普通解雇
  2. 懲戒解雇
    1. 諭旨解雇
  3. 整理解雇

普通解雇

整理解雇、懲戒解雇以外の解雇
労働契約の継続が困難な事情があるときに行われる。

労働能力の低下等、労働者の個別的事由に基づいて行なわれる解雇

懲戒解雇

従業員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに、懲戒処分として行うための解雇
解雇の事由を就業規則や労働契約書にに記載しておく必要がある。

懲戒解雇のパターン

  1. 30日予告をして、30日後に解雇
  2. 解雇予告手当を支払って即日解雇
  3. 監督署に解雇予告除外認定申請を行い、認定されてから解雇
  4. 監督署に解雇予告除外認定申請を行い、認定処分結果が出る前に解雇

「4」の場合、不認定が出たら解雇予告手当の支払いが必要になる。

申請後、認定処分が出るまでに解雇をしても、その後認定が出たときは、その処分は申請がされたときに遡って効力を発揮することにしている。(昭63.3.14 基発第150号)

諭旨解雇

本来懲戒解雇に相当するが、対象労働者本人が懲戒の前提となる事実関係について深く反省しているのでこれを承諾するという意味であり、その上で使用者の懲戒解雇を実施するに当たってのデメリットや労働者の不利益の被り方を低くする処置として行なう解雇。
あくまで懲戒の一つ

対象労働者本人に退職願の提出を要求し、(形式上)自発的に行なう諭旨退職とすることが多い。

整理解雇

会社の経営悪化により、人員整理を行うための解雇

倒産などの回避を目的とするためなど、経営上の事由に基づく人員整理として行なわれる解雇
整理解雇の4要件を満たさない場合、無効となることが多い

整理解雇の4要件

  1. 人員整理の必要性
    1. 整理解雇することに客観的な必要があること
  2. 解雇回避努力義務の履行
    1. 解雇を回避するために最大限の努力を行ったこと
  3. 被解雇者選定の合理性
    1. 解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的に行われていること
  4. 手続きの妥当性
    1. 労使間で十分に協議を行ったこと

解雇と退職勧奨の違い

退職勧奨は使用者から退職を勧めるもの。労働者本人の同意を得ることで退職が成立する。
解雇予告は不要。

解雇の場合には、30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払が必要になる。(上述)
勤務成績・勤務態度等を理由とした解雇の場合、使用者側の注意・指導が不十分であると、解雇自体が無効と判断される可能性がある。

解雇は最終手段で、原則として退職勧奨から進めていくのが良い。
ただし、執拗な退職勧奨は退職を強要したとなり、これまた違法となる可能性があるのでやりすぎない方がよい。
退職勧奨自体は違法ではなく、度を超えた退職勧奨が違法になる。

また、退職勧奨の際、退職勧奨に関する「合意書」を労働者との間で取り交わす。

退職勧奨 解雇
労働者との合意 必要 不要
解雇の予告 不要 必要
助成金の
ペナルティ
あり
不当解雇の
訴訟リスク
少ない あり
雇用保険給付
(失業保険)
支給制限なし
直ぐに受給

退職勧奨を受諾した場合の労働者のメリット

退職勧奨受諾による退職をした場合、労働者本人は、雇用保険の給付(いわゆる失業保険)が支給制限無で受けられる。