解雇の意思表示の撤回はできるのか

解雇の意思表示の一方的な撤回

労働者に解雇を伝えた後で、使用者が提示した解雇を一方的に撤回しようとすることがあります。

この場合、解雇の意思表示を撤回することはできるのでしょうか?

答えは、「撤回できない」です。

解雇の意思表示は、労働者に伝わった時点で効果が発生します。

このため、労働者の同意があれば解雇を取り消すことができますが、労働者の同意が無い場合には解雇を撤回することはできません。

使用者の行った解雇予告の意思表示は、一般的には取り消すことを得ないが、労働者が具体的事情の下に自由な判断によって同意を与えた場合には、取り消すことができるものと解すべきである。解雇予告の意思表示の取消に対して、労働者の同意がない場合は、自己退職の問題は生じない。」(昭和25年9月3日 基収第3824号、昭和33年2月13日 基発第90号)

使用者から一方的に行える解雇について、その取り消しも一方的に行えるとなると、労働者の地位が不安定な状態になってしまいます。

解雇の撤回を伝えられた(伝えた)後の対応

労働者としては、次の方法が考えられます。

  • 解雇の撤回を受け入れる
  • 解雇を有効として、解雇予告手当や退職金の請求をする

使用者としては、一方的に解雇を撤回できませんので、労働者が解雇の撤回に同意してくれない場合には、解雇予告手当や退職金の支払いに応じる必要が出てきます。

解雇の意思表示を撤回しようとするパターンで多いのは、次のようなものです。

  • 労働者に即時解雇を伝えた後、労働者から解雇予告手当を請求されたため解雇を撤回、その後、解雇予告の通知に切り替えるもの。
  • 解雇をすることで助成金が不支給になることが分かり、解雇を撤回しようとするもの。

解雇の日付の変更はできるのか

労働者の同意なく、使用者は提示した解雇を撤回することはできませんが、解雇の日付を変更することはできるのでしょうか?

解雇の日付の一方的な変更も解雇の一方的な撤回と同様、原則として認められず、労働者が同意するのであれば認められます。