社会人マナーに欠ける退職者への対処

引継ぎをしないで退職をする者へ備える

退職金の支給額に差をつける

自己都合退職を「合意退職」と「辞職」に分け、退職金の支給額も差をつける。
たとえば、合意退職の場合100%支給のところ、辞職の場合は50%にするなど

  • 合意退職
    • 無理なく引継ぎが完了できる日以降を退職日とする
  • 辞職
    • 正当な理由がないにもかかわらず、引継ぎができないような退職の仕方をした場合
      • 退職日までの日をすべて有給休暇に使用するなど

退職時にまとめて年次有給休暇を取ることへ備える

年次有給休暇の計画的付与を利用する

有休の計画付与では、あらかじめ有休の使用日を使用者側が指定し有休を使用させてしまうことが可能。ただし、最低限5日は本人が自由に利用できるように確保しておかなければならない。
有休の計画付与に最大限の日数を使用してしまえば、退職時にまとめて取れる有休日数は5日になる。

欠点は、計画付与で与えた有休の指定日に労働をさせることができなくなること。そして、原則として指定した年次有給休暇を使用者・従業員の都合で一方的に変更することはできないこと。

計画的付与の場合には、労働基準法第39条第4項の労働者の時季指定権及び使用者の時季変更権はともに行使できない
(昭和63.3.14 基発 第150号、婦発 第47号)

対応として、年次有給休暇の計画付与の協定書に、やむを得ない場合の変更について盛り込んでおく必要がある。

休日出勤させて引継ぎをしてもらう

それでも、退職日まですべての日を有給休暇の消化で埋めてしまう退職者に対しては、休日出勤の命令を出し、引継ぎを行ってもらう。
有給休暇は休日には使用できないため、正当な理由がなければ休日出勤を拒否できない。

デメリットとしては、休日出勤手当がかかること。

研修等の費用援助を受け、修了した途端に退職する者へ備える

MBA取得のための海外留学等、研修に対する高額な費用援助を受け、研修が終わった途端に退職してしまう者に対しては、退職後に損害賠償や返還請求を行っても法的な効果はない

そもそも、「一定期間労働しなかった場合に損害賠償としてその費用を支払わせる」ことは、損害賠償の予定となり法律違反になる。

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
(労基法 第16条)

金銭消費貸借契約を結ぶ

内容は似たようなものだが、「研修費用を出す→退職→損害賠償」はできないが、「研修費用を貸付ける→一定期間働いた→費用を免除」は可能。
一定期間労働した場合にはその返済を免除する特約を付けた「金銭消費貸借契約」を結ぶ
この場合は、費用の貸与であるため、法違反にはならない。