労災保険を使うと保険料が上がる?上がらない?
「労災を使うと保険料が高くなるから、労災を使わせない。」こんなことを言う経営者がたまにいます。保険料が上がるのは本当でしょうか?
これは、本当でもあり、間違いでもあります。
実際に、労災保険には、労災保険を使うと労災保険料が上がる仕組みはあります。
メリット制という制度です。
ただし、すべての会社がメリット制の対象となるわけではありません。また、労災を使ったからといって、必ず保険料が上がるわけでもありません。
唯一確実な間違いは、「労災を使うと保険料が高くなるから、労災を使わせない。」ということです。労災隠しとなり、違法行為です。
メリット制
メリット制は、労働災害の多い少ないにより労災保険率を増減させる制度です。
大きな労働災害を発生させたり労働災害の発生が多い事業では労災保険率が高くなります。つまり保険料が上がります。
どこが「メリット」?と感じるかもしれませんが、労働災害の発生が少ない事業では労災保険率が低くなり、保険料が下がるためメリットが生じます。
労災保険の保険料率が最大40%上昇する可能性がある一方で、保険料率が下がる場合には最大40%の減少になります。
通勤災害の場合は、業務と関係ないため、メリット制(保険料率)に影響はありません。
メリット制の適用になる対象事業場
メリット制の対象となるのは、事業の継続性と事業の規模の2つの要件を満たしている事業です。
- 事業の継続性
- 事業の規模
事業の継続性
連続する3保険年度中の最後の保険年度に属する3月31日現在において、労災保険にかかる労働保険の保険関係が成立した後3年以上経過していること。
事業の規模
- 常時100人以上の労働者を使用する事業
- 常時20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、その使用労働者数に、事業の種類ごとに定められている労災保険率から非業務災害率を減じた率を乗じて得た数が0.4以上であるもの
- 一括有期事業(建設の事業及び立木の伐採)であって、確定保険料の額が40万円以上であるもの
メリット労災保険率の算定方法
メリット労災保険率 = (労災保険率 - 非業務災害率)×(100 + メリット増減率)÷ 100 + 非業務災害率
この計算式からも分かるように、通勤災害などの非業務災害部分が除外されて保険率が算出されています。
労災保険料率の決定通知
翌年度のメリット労災保険率については、労働保険料の年度更新申告書と一緒に「労災保険率決定通知書」が送られてきます。
この通知書には、メリット制が適用された労災保険率、メリット収支率、メリット増減率等が記載されています。
参考資料
-
前の記事
過重労働による通勤災害は使用者に責任が!? 2018.03.14
-
次の記事
労災二次健康診断の受診方法と労務 2022.09.21