健康診断

  • 安衛法:安全衛生法

健康診断の種類

事業者は、労働安全衛生法第66条に基づき、労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければなりません。
労働者もまた、事業者が行う健康診断を受けなければなりません。

実施が義務付けられている健康診断

  • 一般健康診断
    • 雇入時の健康診断
    • 定期健康診断
    • 特定業務従事者の健康診断
    • 海外派遣労働者の健康診断
    • 給食従業員の検便
  • 特殊健康診断
    • 有機溶剤業務
    • 鉛業務
    • 四アルキル鉛等業務
    • 特定化学物質の製造または取扱う業務
    • 高圧室内作業務または潜水業務
    • 放射線業務
    • 潜水業務
    • 放射線業務
    • 除染業務
    • 石綿
  • じん肺健康診断
  • 歯科医師による健康診断

特定業務従事者の特定業務とは

一般健康診断の特定業務従事者の健康診断の特定業務とは、安衛規則第13条第1項第2項に掲げる次の業務です。

  • 高熱物体の取扱いや著しく暑熱な場所での業務
  • 低音物体の取扱いや著しく寒冷な場所での業務
  • 有害放射線にさらされる業務
  • じんあいや粉末が飛散する場所での業務
  • 異常気圧下の業務
  • 削岩機等、身体へ著しい振動がある業務
  • 重量物の取扱いの業務
  • 強烈な騒音がある場所での業務
  • 坑内での業務
  • 深夜業を含む業務
  • 有害物を扱う業務
  • 有害物のガス、蒸気や粉じんを発散する場所での業務
  • 病原体による汚染のおそれが著しい業務
  • その他厚生労働大臣が定める業務

一般健康診断

定期健康診断

事業者は、労働者に対して、1年に1回以上の定期健康診断の実施の義務があります。
また、労働者にも定期健康診断の受診義務があります。ただし、会社(事業者)が行う定期健康診断を受けたくない場合には、労働者自らが希望する医師の診断を受け、所定の項目について証明書を会社に提出すれば良いです。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
(安衛法 第66条第1項)

事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期的に医師による健康診断を行わなければならない
(安衛法施行規則 第44条)

労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
(安衛法 第66条第5項)

健康診断を実施する必要がある「常時使用する短期間労働者」とは

次の「1」「2」を満たす者

  1. 期間の定めのない労働契約により使用される者
    • 期間の定めのある労働契約により使用される者であっても下記の場合は含める
      • 契約の更新により1年以上使用されることが予定されている者
      • 契約の更新により1年以上引き続き使用されている者
  2. その者の1週間の労働時間数が、同種の業務に従事する通常の労働者の所定労働時間数の4分の3以上である。
1週間の労働時間数
労働契約 4分の3以上 4分の3未満
契約期間 雇用期間現況 雇用予定 健康診断実施
定めなし 必要 不要
定めあり 既に1年以上雇用 必要 不要
1年未満 1年以上 必要 不要
1年未満 1年未満 不要 不要

賃金・健康診断費用負担について

定期健康診断

健康診断費用

法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきもの。(昭和47.9.18 基発 第602号)

受診時間と賃金

健康診断の時間の賃金については、「当然に事業主が賃金を支払わなければならない」ものではありませんが、受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいです。

特殊健康診断*1

健康診断費用

健康診断の実施は事業主の義務であるため、費用は当然事業主が負担します。

受診時間と賃金

特殊健康診断を実施する時間は労働時間であり、所定労働時間内に行われるのが原則です。
このため、特殊健康診断が時間外に行われた場合は、当然割増賃金の支払が必要になります。

派遣従業員の健康診断

一般健康診断は、派遣元に実施義務があり、
特殊健康診断は、派遣先に実施義務があります。
健康診断結果に基づく就労に関する配慮義務は、派遣元・派遣先双方が負うことになります。

 


 

健康診断の受診拒否と懲戒処分

安衛法では、労働者の受診義務違反に対する罰則はありません。
しかし、事業者が労働者に健康診断を受診させなければ事業者が刑罰を受けることになるわけですので、事業者としては懲戒を持って受診させることが必要になってきます。

裁判例でも、事業者は労働者に対して安衛法上の健康診断の受診を職務上の命令として命じることができ、受診拒否に対して懲戒処分を行うことが認められています。
人間ドッグなどの法定外の健康診断についても、その合理的必要があれば、労働者に受診義務が課されるものと解されています。

「別の病院で受けるから、会社の健康診断は受けない」 は可能

安衛法において、労働者は健康診断の受診義務があります。
ただし、事業者が指定する医師以外の医師による健康診断を受けることを認めています。
(安衛法 第66条)

労働者は、事業者が指定した医師による健康診断の受診を希望しない場合は、別の医師による健康診断を受け、その結果を書面で事業者に提出しなければならなりません。

会社の対応

労働者が、会社指定の医師以外の医師による健康診断を受ける場合の会社の対応としては、次のようなものがあります。

  1. 健康診断結果は義務なので提出してもらいます。
  2. 費用負担については、次のような方法が考えられます。
    1. 別の医師による健康診断の費用は支払わない
    2. 会社の健康診断の会社負担額と同額を支払う
    3. 別の医師による健康診断の費用の請求額を全額支払う