企業型確定拠出年金
- 2017.05.17
- 退職金・年金
確定拠出年金の種類
確定拠出年金は、掛金の拠出者により、大きく2つの種類があります。
- 個人型 掛金を個人が拠出する。
- H29年1月より「iDeCo」という愛称で呼ばれている。
- 企業型 掛金を企業が拠出する。
企業型確定拠出年金の特徴
- 掛金は企業が負担
- 運用商品は加入者(従業員)が選択
- 運用実績に応じて受取金額が決定
- 原則60歳になるまで受け取りできない
選択制の企業型確定拠出年金
企業型確定拠出年金の制度設計の一つに「選択制」確定拠出年金というものがあります。
選択制の確定拠出年金は、企業が負担する掛金を給与として受け取るか、掛金として確定拠出年金に拠出するかを従業員個々人が選択することができる制度です。
パターンとしては大きく2つです。
- 掛金に相当する額を給与として受け取る
- 給与としては受け取らず、確定拠出年金に掛金として拠出
要するに、そのお金いつ受け取るの?「今でしょ!」「後でしょ!」を選択するということです。
「1」の場合は、「通常の給与+掛金相当額」が給与として支給され、「2」の場合には、「通常の給与」がそのまま給与として支給されます。
さらに、合わせわざとして、企業が負担する額の範囲内で、給与として受け取る分と掛金として拠出する分を按分して受け取り又は拠出することも可能です。
- 例:「3割を給与として、7割を確定救出年金の掛金として拠出する」など
選択制確定拠出年金導入時の給与体系
選択制確定拠出年季を実際に導入する場合には、現在の給与体系を少し変更し、現状の給与の一部を掛金相当額の枠として切り替えます。
例:基本給25万円、諸手当5万円の場合で、3万円を確定拠出年金に引き当てる場合
まず、基本給:22万円、DC手当3万円、諸手当5万円のように給与体系を変更します。
ここで、従業員に上述の「1」、「2」のパターンを選択してもらいます。
- 上述の「1」を選択した従業員の場合
- DC手当を給与として受け取る場合は、給与額は30万円(基本給22万円、DC手当3万円、諸手当5万円)となります。
- 上述の「2」を選択した従業員の場合
- DC手当を掛金として拠出する場合は、給与支給額は27万円(基本給22万円、諸手当5万円)となります。
当然の事ながら、「2」を選択した場合、従業員の給与の受取額は減ります。
選択制確定拠出年金のメリット・デメリット
メリット
「2」を選択した場合のメリットは、税金、社会保険料が軽減されることです。
確定拠出年金の掛金は、所得税や住民税が非課税となり、社会保険料の算定となる報酬からも除外されています。
非課税:事業主が拠出した掛金額は、全額損金算入される。加入者が拠出した掛金額は、全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)されます。
- 企業
- 社会保険料が軽減する(可能性がある)
- 役員であっても掛金の拠出が可能
- 中小企業退職金共済(中退共)では認められていない役員の加入も可能
- 従業員
- 税金(所得税、住民税)が軽減する
- 社会保険料が軽減する(可能性がある)
- 確定拠出年金なので、転職などの際に、次の確定拠出年金で運用を続けることが可能
デメリット
「2」を選択することのデメリットは、
掛金部分が社会保険料の算定対象から除かれることで生じるデメリットは、社会保険や雇用保険から受け取る給付額が減ってしまうことです。
具体的には、将来受け取る年金の受給額が減ってしまう、傷病手当金や出産手当金などの健康保険の給付の受取額も減ってしまう、失業した際に雇用保険から受け取る基本手当が減る、労災で休業した際の受け取り額が減るなどがあります。
支給額が減ることで、時間外労働の割増単価が減ってしまうため、就業規則などで割増単価に算入させるようにして対処するのが望ましいです。
支給額が減ることで、最低賃金額を下回ってしまうケースも出るので、制度設計時に配慮が必要になります。
- 企業
- 運用の手間が増える
- 従業員
- 原則60歳になるまで受け取れない
- 公的年金の額が減少する
- 傷病手当金や、出産手当金などの受給額が減る
- 残業単価が減る
- 退職時の雇用保険の基本手当(失業保険)の額が減る
Q17.確定拠出年金法による企業型年金の事業主掛金は、賃金に該当しますか。
A.確定拠出年金法による企業型年金においては、事業主掛金は資産管理機関(個人別の資産を管理する機関)に対して納付され、年金加入者である労働者は投資商品を選択して自ら運用指図を運営管理機関(企業型年金の管理を行う機関)に対して行ないます。このように、事業主掛金は資産管理機関において個人別に資産管理されるものの、労働者が自由に処分できるものではありません。またこの掛金は、規約において掛金額を定め、事業主が毎月の掛金を翌月末日までに納付されていることとされており、一定の受給要件を充たした場合にのみ労働者に対し給付が開始される点は、既存の厚生年金基金制度や中小企業退職金共済制度と異なることはありません。したがって、確定拠出年金の事業主掛金が賃金に該当するかどうかを明確に解釈を示した通達は未だありませんが、他の制度における考え方と同様、労働基準法第11条の賃金に該当しないと考えられます。
(Q17.確定拠出年金法による企業型年金の事業主掛金は、賃金に該当しますか。 | 東京労働局)
選択制企業型確定拠出年金で、社会保険料を減額するために知っておくべき事
上述したように、掛金として拠出する「2」の選択をする事で社会保険料が軽減する可能性があります。
社会保険料を減額するためには、社会保険料の決定の仕組みを知らなければなりません。
この仕組みを知らずに、絶対社会保険料が減ると思い込んでいる経営者も多いです。
しかし、仕組みを知らない場合は、単純に従業員が受け取る給与支給額が減るだけになってしまいます。税金は減ります。
税金は減りますが、個人の所得税や住民税なので企業には関係ないですので、社会保険料の削減には繋がりません。
社会保険料を減らすために知らなければならない、社会保険料の決定の仕組みとは・・・
長くなりますので、別のページに記入することにしました。
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