企業型DCとiDeCo(個人型DC)の違い
- 2018.10.10
- 退職金・年金
企業型DC
制度
企業型DCは、企業が掛金を毎月拠出(積み立て)し、加入者(従業員)が自分で年金資産の運用を行う制度です。
企業型DCの2つの制度
企業型DCには2つの制度があります。
基本となるのは従業員が自動的にDCに加入する制度です。これとは異なり、DCに加入するかどうかを従業員が選択できる「選択制」を導入することも可能です。
- 従業員が自動的に加入する制度
- 企業型DCに加入するかどうかを選択できる「選択制」の制度
選択制の企業型DCとは
選択制の企業型DCは、企業が拠出するお金を、DCの掛金にするのか、給与への上乗せで受け取るのかを従業員が選べる制度です。
給与への上乗せとして受け取る場合、受け取ったお金は給与となります。そのため、通常の給与同様、税金や社会保険料の対象となります。
企業型DCの掛金
掛金の額は、会社での役職等に応じて決めているのが一般的です。
ただし、掛金には限度額(上限額)が定められているので、この上限額を超えて掛金を拠出することは認められていません。
掛金の上限
掛金上限(月額) |
|
他の企業年金がある場合 |
27,500円 |
他の企業年金がない場合 |
55,000円 |
他の企業年金とは、厚生年金基金、確定給付企業年金などのことです。
マッチング拠出
マッチング拠出とは、企業が拠出する掛金に、従業員が上乗せして掛金を拠出することができる制度です。
マッチング拠出で従業員が拠出する掛金は、全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
マッチング拠出を採用しない企業もあります。
マッチング拠出の上限
マッチング拠出にも拠出できる金額に上限があります。次のようになっています。
- 従業員が拠出する掛金の額が、企業が拠出する掛金の金額を超えないこと
- 企業が拠出する金額と、従業員が拠出する金額の合計額が、上で書いた掛金の拠出限度額を超えないこと
企業型DCの手続き
企業が行うこと
加入手続のほとんどは企業が行います。
最初にかかる運営管理機関(金融機関)の選定、
毎月拠出する掛金や企業型DCの口座管理にかかる手数料は、企業が負担します。
従業員が行うこと
従業員が行うことは、毎月の掛金で購入する運用商品や購入の配分を決めることです。
選択制の企業型DCの場合には、これに加えて、拠出する掛金の金額も決めることになります。
転職・離職する場合
従業員が離職する場合、企業型DCの年金資産は、持ち運びすることができます。
転職先等 |
手続 |
企業型DCがある企業 |
企業型DCの移換 |
企業型DCがない企業 公務員 自営業 専業主婦(夫) |
iDeCo(個人型確定拠出年金)への移管 |
転職等でDCを移管した場合、掛金の上限が移管先と移管前で異なる場合があります。
移管前の掛金が移管先での上限を超えている場合は、掛金の額を引き下げることになります。
iDeCo(個人型DC)
iDeCoは、個人型DC(確定拠出年金)のことです。
制度
企業型DCと異なり掛金の拠出も加入者本人です。運用するのは、企業型DC同様、加入者本人です。
原則として20歳以上60歳未満のほとんどの人が加入できます。企業型DCのマッチング拠出のような、(こちらは企業が)上乗せで拠出する中小事業主掛金納付制度もあります。
iDeCoを利用できないケース
国民年金に加入できない人は加入できません。
企業型DCが導入されている企業に勤めている人も利用できません。
ただし、iDeCoとの併用が認めるられている場合は、iDeCoの利用が可能です。
マッチング拠出を利用している場合には、iDeCoは利用できません。
iDeCoは、国民年金の上乗せなので、国民年金に加入できないなど、次の人は加入できません。
- 60歳以上の人
- 海外に住んでいる人
- 農業者年金に加入している人
- 国民年金保険料を未払いの人
- 国民年金保険料の免除・納付猶予を受けている人
国民年金保険料が未払いの人や免除・納付猶予を受けている人は、国民年金に加入できない人ではありませんが、土台部分の国民年金を満額払っていない人たちなのでiDeCoを利用できません。まずは、土台の部分を払う必要があります。
iDeCoの掛金
掛金は、月額5,000円から1,000円単位で拠出できます。
掛金の上限額
企業型DC同様、iDeCoにも掛金の上限額が定められていて、次のようになっています。
国民年金被保険者 |
区分 |
掛金上限 年額 (月額) |
第1号被保険者 |
自営業等 |
816,000円 (68,000円) |
第2号被保険者 |
企業年金がない |
276,000円 (23,000円) |
企業型DCに加入 |
240,000円 (20,000円) |
|
企業型DCとDBに加入 |
144,000円 (12,000円) |
|
DBに加入 |
||
公務員 |
||
第3号被保険者 |
専業主婦 |
276,000円 (23,000円) |
中小事業主掛金納付制度(iDeCo+)
中小事業主掛金納付制度は、従業員のiDeCoの掛金に会社が上乗せで拠出する制度です。
iDeCoにプラスして拠出するという意味で、iDeCo+(イデコプラス)という愛称がつけられました。こちらの方が表現としては分かりやすいかもしれません。
マッチング拠出に似ていますが、マッチング拠出は、企業型DCの企業の掛金に個人が上乗せで拠出するのに対し、中小事業主掛金納付制度は個人型DCであるiDeCoの掛金に会社が上乗せで拠出します。
すべての企業が導入できるわけではなく、企業年金を実施していない中小企業(従業員数100人以下)を対象としています。
中小事業主掛金納付制度の拠出上限
掛金の拠出限度額は、iDeCoの拠出限度額までです。
そのため、中小事業主掛金納付制度を利用し企業がiDeCoの掛金に上乗せ拠出する場合は、本人が拠出する金額と企業が上乗せする金額との合計が、iDeCoの拠出限度額までとなります。この場合、企業年金がない場合と同じ、合計金額は月額23,000円が上限になります。
手続き
iDeCoへの加入、商品の選定、運用などほとんどの手続きは、加入者本人が行います。
企業が行う手続き
ただし、従業員がiDeCoに加入する場合には、次のような手続きが発生します。
- 事業主の証明書の発行(新規加入時、転職時等)
- 加入申込と事業主の証明書について(加入時)
- 源泉徴収及び年末調整
- 現況届の提出(年1回(毎年6月頃))
- 事業主に係る事項に変更があった際の届出
これ以外に、掛金の納付方法に「事業主払込(企業による掛金の納付)」を選択している場合には、掛金の納付が必要になります。
事業主払込は事務作業が煩雑になることもあり、事業主払込を行わない企業も多くあります。
転職・離職する場合
企業型DC同様、iDeCoの年金資産は、転職の際持ち運びすることができます。
転職先等 |
手続き |
企業型DCがある企業 |
iDeCoから企業型DCに変更 |
企業型DCがない企業 自営業 公務員 専業主婦(夫) |
iDeCoを継続 |
DC・DB
DCとは、Defined Contribution Planの略で、確定拠出年金と呼ばれています。
あらかじめ掛金額を決めて(確定して)おき、掛金の運用成績に応じた年金額を受け取る年金制度のことです。拠出する金額が決まっているので確定拠出です。
これに対して、受け取る年金額(給付額)が決まっている年金制度は、確定給付年金(DB)と呼ばれます。DBは、Defined benefit pension planの略です。
ここまで多用してきた言葉ですので今更ですが、ときどきDCとDBの略す前の言葉を知りたくなるのでメモしておきました。
参考
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年金はいつからもらうのが良いのか 2018.06.12
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