業務改善助成金2025
趣旨
業務改善助成金は、最低賃金の引上げに向けた環境整備を図ることを目的としています。具体的には、「事業場内で最も低い賃金」を一定額以上引き上げるとともに、生産性向上につながる設備投資(機械設備導入、コンサルティング、人材育成・教育訓練など)を行った場合に、その費用の一部を助成するものです。
対象となる会社
業務改善助成金の対象となる会社は、以下の要件を満たす中小企業事業者です。
1. 中小企業の定義に合致すること:
◦ 一般産業(下記以外):資本金の額または出資の総額が3億円以下、または常時使用する労働者数が300人以下。
◦ 卸売業:資本金の額または出資の総額が1億円以下、または常時使用する労働者数が100人以下。
◦ サービス業:資本金の額または出資の総額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数が100人以下。
◦ 小売業:資本金の額または出資の総額が5,000万円以下、または常時使用する労働者数が50人以下。
◦ 上記のいずれかの要件を満たす必要があります。
◦ 医療法人、社会福祉法人、NPO法人などで資本金がない場合は、常時使用する労働者数によって判断されます。
◦ いわゆる「みなし大企業」(大企業が株式総数の2分の1以上を所有している場合など)は対象外です。
2. 申請する事業場における事業場内最低賃金と地域別最低賃金の差額が50円以内であること。
3. 不交付要件に該当しないこと。
◦ 例えば、交付申請日の6ヶ月前から実績報告日までの間に労働者を不当に解雇した場合、賃金を引き下げた場合、他の国や地方公共団体から同一の経費や賃金引上げで助成を受けている場合、労働関係法令に違反している場合、労働保険料を滞納している場合などが該当します。
何を行う必要があるのか
助成金を受けるためには、以下の2つの取組を行う必要があります。
1. 賃金引上げ計画の策定と実施:
◦ 雇入れ後6ヶ月を経過した労働者のうち、事業場内で最も低い時間当たりの賃金(事業場内最低賃金)を、申請コースで定められた引上げ額以上に引き上げる必要があります。
◦ 引き上げ後の賃金額を就業規則などで事業場で使用する労働者の下限の賃金額として定める必要があります。
◦ 賃金引上げは、原則として交付申請後から事業完了期日までに行う必要があります(地域別最低賃金の改定時を除く)。
◦ 賃金引上げは複数回に分けて行うことは認められません。
◦ 賃金の実際の支払いは、事業実績報告書の提出日までに行う必要があります。
2. 生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等を行い、その費用を支出すること:
◦ 助成対象となる設備投資は「生産性の向上、労働能率の増進に資する」と認められるものでなければなりません。
◦ 交付決定前に行った設備投資等は助成対象となりません。
◦ 設備投資等の実施と経費の支出は、交付決定後から交付決定の属する年度の1月31日までに行う必要があります(やむを得ない理由がある場合は3月31日まで延長可能)。
◦ 助成対象経費の下限は10万円です(消費税は含まれません)。
受給額
助成金の額は、助成対象経費に助成率を乗じた額、または引き上げる労働者数に応じた上限額のいずれか低い額となります。
1. 助成率:
◦ 事業場内最低賃金が1,000円未満の事業場:4/5
◦ 事業場内最低賃金が1,000円以上の事業場:3/4
2. 上限額:
◦ 上限額は、選択する引上げ額のコース区分、引き上げる労働者数、および事業場規模(30人未満か30人以上か)によって異なります。
◦ 例:30円コースの場合
▪ 1人:30万円(事業場規模30人未満の場合は60万円)
▪ 2~3人:50万円(事業場規模30人未満の場合は90万円)
▪ 4~6人:70万円(事業場規模30人未満の場合は100万円)
▪ 7人以上:100万円(事業場規模30人未満の場合は120万円)
◦ 最高額は90円コースの7人以上で450万円です(事業場規模30人未満の場合も同額)。
3. 特例事業者:
◦ 以下のいずれかの要件を満たす事業者は特例事業者として、賃金引上げ労働者数10人以上の助成上限区分を適用できる場合があります。
▪ 賃金要件:事業場内最低賃金が1,000円未満の事業場。
▪ 物価高騰等要件:原材料費の高騰など外的要因により、最近3ヶ月間のうち任意の1月における利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が、前年同月に比べ3%ポイント以上低下している事業者。
◦ 特例事業者の場合の上限額の例(30円コース、10人以上):120万円(事業場規模30人未満の場合は130万円)。
◦ また、物価高騰等要件に該当する特例事業者に限り、通常は助成対象外となる**乗車定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車や貨物自動車、パソコン、タブレット、スマートフォン等の端末および周辺機器(新規購入に限る)**が助成対象となる場合があります。
4. 端数処理:
◦ 助成額に1,000円未満の端数がある場合は切り捨てられます。
5. 消費税:
◦ 助成申請額は、原則として消費税を除いて算定します。ただし、免税事業者や簡易課税事業者などは、消費税を含めて算定できる場合があります。
◦ 消費税を含めて助成を受けた場合は、後日、仕入税額控除に係る報告が必要となり、控除税額がある場合は国庫への返還が生じます。
ご不明な点があれば、労働局の雇用環境・均等部(室)にご相談ください
効果的な申請時期
業務改善助成金の申請時期を考える上で最も重要なのは、賃金引上げと設備投資等の実施時期に関するルールです。
1. 交付申請前の実施は助成対象外:
◦ 交付申請書を労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合、助成の対象となりません。
◦ ただし、申請後、交付決定前であっても、導入予定機器等を発注すること自体は差し支えありません。
◦ 賃金引上げについても、交付申請日より前に引き上げられた賃金は助成対象とはなりません。就業規則等の改正および適用も交付申請後に行われる必要があります。
2. 地域別最低賃金の改定時期を考慮:
◦ 賃金引上げは、地域別最低賃金の引上げを除き、交付申請後から事業完了期日までの間であれば、実施時期を問いません。
◦ しかし、地域別最低賃金の改定(例年秋頃に発効)が重要なポイントです。
▪ 改定後の地域別最低賃金を下回る事業場内最低賃金を、地域別最低賃金の改定額以上に引き上げる場合は、発効日の前日までに賃上げを実施する必要があります。例えば、地域別最低賃金の改定が10月1日発効の場合、9月30日までに賃上げを行う必要があります。
▪ この場合、発効日前の賃金引上げが助成対象となるには、発効日前に交付申請を行い、かつ賃金引上げ日から地域別最低賃金の発効日までに勤務実績があり、賃金引上げが確認できる必要があります。
▪ 地域別最低賃金の発効日以後に賃金を引き上げる場合は、発効日後の最低賃金額から所定の額以上引き上げる必要があります。
◦ したがって、地域別最低賃金の改定時期に合わせた賃上げを計画している場合は、その発効日を考慮して、余裕をもって交付申請を行うことが効果的と言えます。
3. 設備投資は交付決定後:
◦ 生産性向上、労働能率の増進に資する設備投資等の実施と助成対象経費の支出は、交付決定後から当該交付決定の属する年度の1月31日までに行う必要があります。やむを得ない理由がある場合は、3月31日まで延長可能です。
◦ 交付決定には審査期間がかかるため、設備投資を早急に開始したい場合は、なるべく早く申請手続きを済ませる必要があります。
これらの点を踏まえると、最も効果的な申請時期は、地域別最低賃金の改定に伴う賃上げを計画している場合は、その発効日を見据えて、十分な準備期間を確保しつつ、改定前に交付申請を完了させることが考えられます。同時に、設備投資の具体的な計画が確定しており、交付決定後に速やかに実施できる体制が整っていることが重要です。
準備を始める時期
助成金を確実に受給するためには、交付申請のかなり前から計画的な準備が必要です。
1. 賃金引上げ計画の策定:
◦ 雇入れ後6ヶ月を経過した労働者のうち、事業場内で最も低い時間当たりの賃金(事業場内最低賃金)を、どのコース区分で、いくら引き上げるかを具体的に検討します。
◦ 賃金引上げの対象となる労働者の範囲も確認しましょう。
◦ 引き上げ後の賃金額を就業規則等で定める必要があるため、就業規則等の改正準備も並行して行う必要があります。
◦ 申請前6ヶ月分の賃金台帳の写し(申請前の時間給または時間換算額が、引上げ後の事業場内最低賃金に満たない労働者のもののみ)が必要となるため、日頃から賃金台帳を適切に管理しておくことが重要です。
2. 設備投資等の計画と見積もり:
◦ 助成対象となる「生産性の向上、労働能率の増進に資する」設備投資やコンサルティング、人材育成・教育訓練などを具体的に選定します。
◦ 助成対象経費の下限は10万円(消費税は含まない)です。
◦ 原則として、二者以上の業者から見積もりを取る必要があります(契約予定額が10万円未満の場合や、合理的な理由により困難な場合を除く)。これは申請書提出前に準備が必要です。
3. 特例事業者としての要件確認(該当する場合):
◦ 物価高騰等要件に該当し、助成上限額の特例や対象経費の特例を適用したい場合、交付申請書の提出日の属する月の前月から遡って3ヶ月間のうち任意の1月における利益率(売上高総利益率または売上高営業利益率)が、前年同月に比べ3%ポイント以上低下していることが要件となります。
◦ この要件を満たすためには、該当する期間の月次損益計算書や試算表などの証拠書類を準備し、申請時に申出書(別添1-1または別添1-2)とともに提出する必要があります。事業開始から1年に満たない場合は、適切と認められる期間の値と比較します。これは申請時期に合わせて、直近の財務状況を把握しておく必要があることを意味します。
4. 全体スケジュールの検討:
◦ 賃金引上げ日、設備投資の納品日、経費の支払完了日のうち最も遅い日が事業完了日となります。原則として、交付決定の属する年度の1月31日までに事業完了が必要です(やむを得ない理由がある場合は3月31日まで延長可能)。
◦ 申請から交付決定までの審査期間も考慮し、逆算して準備を進めることが重要です。
不明な点や具体的な計画については、業務改善助成金コールセンターまたは都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談することをお勧めします。