エイジフレンドリー補助金
1. 助成金の趣旨
エイジフレンドリー補助金(間接補助金)の趣旨は、60歳以上の高年齢労働者に特有の労働災害(労働中の怪我や病気)の被災リスクを低減することです。
具体的には、設備の改善等を通じてリスクを低減することや、高年齢労働者を含む全ての労働者の転倒防止・腰痛予防のための運動指導、および健康保持増進のための取組を支援するために交付されます。
2. 対象となる会社(中小企業事業者)
補助金の交付を申請できるのは、原則として中小企業事業者です。
共通の要件
1. 資本金または労働者数が業種ごとに定められた基準以下であること。
◦ 例えば、製造業、建設業、運輸業などの「その他の業種」の場合、資本金または出資の総額が3億円以下、または常時使用する労働者の数が300人以下の事業者です。
◦ サービス業の場合、資本金または出資の総額が5千万円以下、または常時使用する労働者の数が100人以下の事業者です。
◦ 社会福祉法人や医療法人のように資本金や出資がない場合は、常時使用する労働者数(医療・福祉を含むサービス業の場合は100人以下)のみで判断されます。
2. 申請時点で、労働保険に加入していること。
3. 1年以上事業を実施していること。
◦ 新しく開設された事業場や倉庫で、開設後1年未満の場合は対象外です。
4. 過去1年以内に厚生労働省所管法令違反による行政処分や送検等を受けていないこと。
5. 暴力団等に関与していないこと。
コースごとの追加の要件
コース名 | 60歳以上の高年齢労働者の要件 | 対策の対象となる労働者 |
I 総合対策コース | 常時1名以上雇用していること (役員、派遣労働者を除く)。かつ、その高年齢労働者が対策を行う業務に就いていること。 | 高年齢労働者を含む全ての労働者。 |
II 職場環境改善コース | 常時1名以上雇用していること (役員、派遣労働者を除く)。かつ、その高年齢労働者が対策を行う業務に就いていること。 | 高年齢労働者。 |
III 転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース | 60歳以上の年齢要件は必須ではない。 | 役員・派遣労働者を除く5人以上の労働者に対する取組であること。 |
IV コラボヘルスコース | 60歳以上の年齢要件は必須ではない。 | 役員・派遣労働者を除く全ての労働者。 |
3. 何を行う必要があるのか(補助対象となる取組)
コースによって、補助の対象となる活動は大きく異なります。
I 総合対策コース
労働安全衛生の専門家(労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタント等)リスクアセスメント(危険性又は有害性等の調査)労働災害リスクを低減するための設備の改善等(機器の導入や工事の施工など)に要する経費が対象となります。
• 重要な点: このコースは、リスクアセスメント(専門家の指導)と、それに基づく職場環境改善(設備改善)の両方について、それぞれ申請と交付決定の手続きが必要です。
II 職場環境改善コース
高年齢労働者の身体機能の低下を補う設備・装置の導入や、その他の労働災害防止対策に要する経費が対象です。このコースは、専門家によるリスクアセスメントの実施は必須ではありません。
主な対策の例:
• 転倒・墜落災害防止対策: 作業床や通路の段差の解消、滑り防止対策(防滑性能の高い床材の導入、凍結防止装置の導入)、階段への手すりの設置、高所作業台の導入(床面から2m未満のもの)など。
• 重量物取扱いや介護作業における労働災害防止対策: 重量物搬送機器・リフト(乗用タイプは除く)の導入、重筋作業を補助するパワーアシストスーツの導入、介護における移乗介助や入浴介助の負担を軽減する機器の導入など。
• 暑熱な環境による熱中症予防対策: 屋外作業等における体温を下げる機能のある服やスポットクーラーの導入、アイススラリーを冷やすための専用冷凍ストッカーの導入、健康管理システムの導入など。
III 転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース
役員や派遣労働者を除く5人以上の労働者に対し、専門家等(医師、理学療法士、健康運動指導士など)対面で実施するための経費が対象です。
以下の3つのステップをすべて実施する必要があります。
1. 専門家による身体機能のチェックと評価を受ける。
2. その結果に基づき、専門家による運動指導(対面指導)を受ける。
3. 効果を確認するため、再度、専門家による身体機能の改善等のチェックを受ける。
• 重要な点: 物品の購入(トレーニングマシーン、ジムの回数券等)やオンラインによる指導は対象となりません。
IV コラボヘルスコース
労働者の健康保持増進のための取組に要する経費が対象です。
• 前提条件: 事業者が、労働安全衛生法に基づき実施した健康診断の結果を保険者(健康保険組合など)に提供している必要があります。
• 取組例:
◦ 健康スコアリングレポート等を活用した健康管理システムの導入(初期費用のみ。PC購入費などは対象外)。
◦ 専門家(産業医、保健師など)による禁煙指導、メンタルヘルス対策などの健康教育・研修(メンタルヘルス対策は単独での申請は不可)。
◦ 栄養指導、保健指導などの健康保持増進措置。
• 重要な点: 腰痛予防を目的とした運動指導は、このコースではなく「運動指導コース(III)」から申請する必要があります。また、健康診断の実施費用は対象外です。
4. 支給額(受給額)
交付される補助金(間接補助金)の額は、消費税を除く対象経費に対して、コースごとに補助率と上限額が定められています。
コース名 | 補助率 | 上限額(消費税を除く) |
I 総合対策コース | 4/5 | 100万円 |
II 職場環境改善コース | 1/2 | 100万円 |
III 転倒防止・腰痛予防のための運動指導コース | 3/4 | 100万円 |
IV コラボヘルスコース | 3/4 | 30万円 |
• 注意点: 補助金の交付は、1事業者(雇用主)につき同一年度内に1回限りです。また、複数のコースを併せて申請することはできません。
5. いつ申請するのが効果的か。その場合、いつから準備を始める必要があるか。
申請時期
令和7年度の補助金申請受付期間は、令和7年5月15日から令和7年10月31日(当日消印有効)までです。
【効果的な申請時期】 この補助金は、予算額が定められており、予算に達した場合は受付期間の途中であっても申請受付が終了する可能性があるため、可能な限り公募開始直後(5月頃)に申請することが効果的です。
また、補助金の交付決定がされない限り、対策の実施(機器の購入や工事の発注)ができないという重要なルールがあるため、実施に時間を要する取組や年度末までに完了させたい場合は、早めの申請が必要です。
準備を始める時期
【準備の開始】 申請書類を提出し、審査を経て「交付決定通知書」が届いた後でなければ、補助対象となる取組(専門家への指導の発注、機器の購入、工事の発注)を開始(発注)することはできません。交付決定日より前に発注や購入をしていた場合、補助金は支払われません。
そのため、準備は申請期間が始まる前(5月15日以前)に始める必要があります。
1. 事業計画の策定: どのコースでどのような対策を行うかを決定します。
2. 見積もり取得: 導入したい機器や工事、専門家による指導にかかる費用について、業者から正確な見積もりを取得します。
3. 申請書類の準備: 見積もりや会社の情報、高年齢労働者の雇用状況などをまとめた申請書(様式1)を作成します。
• 注意すべき期限:
◦ 申請から交付決定まで、概ね2ヶ月を要します。
◦ 取組の実施、業者への支払い、そして実績報告書及び精算払請求書の提出は、令和8年1月31日(当日消印有効)までに完了し、提出する必要があります。
◦ 特に「総合対策コース」は、リスクアセスメント実施後、改めて労働災害防止対策の申請を行う必要があり、他のコースより時間を要するため、早期の申請が強く推奨されます。
◦ 「運動指導コース」も、交付決定後に運動指導を実施し、効果の確認(事後チェック)までを1月31日までに完了する必要があるため、余裕をもって早めに取り組む必要があります。
