人材確保等支援助成金2025

人材確保等支援助成金2025

要約

人材の確保、定着、および労働環境の改善を目指す事業主を支援するために設計された「人材確保等支援助成金」制度です。本助成金制度は、多様な雇用課題に対応するため、複数の専門コースから構成されています。

主要なコースとして、従業員の離職率低下を目的とする「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」、外国人労働者の職場定着を図る「外国人労働者就労環境整備助成コース」、中小企業のテレワーク導入を支援する「テレワークコース」、そして中小企業団体向けの「中小企業団体助成コース」が存在します。

さらに、建設業界特有の課題に対応するため、「若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース」をはじめとする建設分野に特化した複数の助成金が用意されています。

これらの助成金は、一般的に「計画の策定と提出」「認定された計画に基づく取り組みの実施」「成果(離職率低下など)の評価」「支給申請」という共通のプロセスを経ます。

支給要件は各コースで詳細に定められており、計画の事前提出、期限の厳守、および詳細な証拠書類の保管が不可欠です。不正受給に対しては、返還命令や将来の助成金不支給といった厳しい措置が講じられます。

1. 人材確保等支援助成金の概要

人材確保等支援助成金は、雇用保険法に基づき、魅力ある職場づくりを通じて人材の確保・定着を図り、労働者の雇用安定に資することを目的とする制度です。事業主が直面する様々な課題に対応するため、複数のコースが設けられています。

1.1. 共通の申請プロセス

多くのコースでは、以下の手順で申請が進められます。

  1. 計画の策定・届出: 取り組みを開始する前に、詳細な事業計画書や整備計画書を作成し、管轄の都道府県労働局に提出します。
  2. 計画の認定・受理: 労働局が計画を審査し、認定または受理します。
  3. 取り組みの実施: 認定された計画に基づき、制度の導入や環境整備などを実施します。
  4. 評価期間: 計画実施後、離職率の低下などの成果を測定するための評価期間が設けられます。
  5. 支給申請: 計画期間および評価期間の終了後、定められた期間内に実績報告書や必要書類を添えて支給申請を行います。
  6. 支給決定: 労働局が審査を行い、支給額が決定・支払われます。

1.2. 共通の不支給要件

以下のいずれかに該当する場合、助成金は支給されません。

  • 不正受給により不支給措置が取られている期間中の申請。
  • 過去の労働保険料を納入していない場合。
  • 申請日の前日から過去1年間に労働関係法令の違反がある場合。
  • 風俗営業、接待を伴う飲食等営業を行っている場合。
  • 暴力団と関わりがある場合。
  • 申請日または支給決定日時点で倒産している場合。

1.3. 書類の保管義務

助成金の支給決定を受けた事業主は、申請に関連する書類(申請書、添付書類、経費の証拠書類等)を支給決定日から5年間保管する義務があります。労働局による立ち入り検査や会計検査の対象となることがあります。

2. 主要な助成金コース詳細

2.1. 雇用管理制度・雇用環境整備助成コース

求職者や従業員にとって魅力ある職場を創出するため、雇用管理制度や業務負担を軽減する機器等を導入し、従業員の離職率低下が図られた場合に支給される助成金です。

項目

詳細

目的

雇用管理改善と労働環境整備による人材定着の促進。

主要な取り組み

1. 雇用管理制度の導入・改定

・賃金規定制度

・諸手当等制度(住居、家族手当等)

・人事評価制度

・職場活性化制度(メンター制度、従業員調査、1on1ミーティング)

・健康づくり制度(人間ドック等)

2. 雇用環境整備

・身体の業務負担を軽減する機器・設備等の導入。

主な支給要件

・雇用管理制度等整備計画を策定し、労働局長の認定を受けること。

・計画に基づき、期間内に制度や機器を導入・実施すること。

・評価期間(計画期間終了後1年)の離職率が、計画提出前の離職率より低下し、かつ30%以下であること。

支給額

導入した制度や機器に応じて支給額が定められています。賃金要件(対象労働者の賃金を5%以上引き上げ)を満たす場合、助成額が25%加算されます。

支給額の例(賃金要件を満たさない場合)

・賃金規定制度:40万円

・職場活性化制度:20万円

・雇用環境整備:対象経費の1/2(上限150万円)

・複数の制度導入時の上限:80万円

2.2. 外国人労働者就労環境整備助成コース

外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して助成されます。

項目

詳細

目的

外国人労働者のための就労環境整備による職場定着の促進。

対象事業主

雇用保険被保険者となる外国人労働者を雇用する事業主。

主要な取り組み

【必須メニュー】

・雇用労務責任者の選任と外国人労働者への周知・面談。

・就業規則、雇用契約書等のいずれかを多言語化し、周知。

【選択メニュー】(いずれか1つ以上を実施)

・母国語等による苦情・相談体制の整備。

・一時帰国のための有給休暇制度の整備。

・社内マニュアル・標識類等の多言語化。

主な支給要件

・就労環境整備計画を作成・提出し、措置を導入・実施すること。
・措置実施日の翌日から6か月間の外国人労働者の離職率が15%以下であること。

支給額

1つの措置導入ごとに20万円(上限80万円)。

対象経費

通訳費、翻訳機器導入費、翻訳料、専門家への委託料、多言語の社内標識類設置・改修費など。

2.3. テレワークコース

良質なテレワークを制度として導入・実施することで、人材確保や雇用管理改善に効果をあげた中小企業事業主を支援します。

項目

詳細

目的

中小企業におけるテレワークの導入・定着を促進し、人材確保を支援。

支給体系

2段階助成

制度導入助成:テレワーク制度の新規導入または実施拡大。

目標達成助成:制度導入後の離職率低下とテレワーク実績の維持・向上。

主な支給要件

【制度導入助成】

・テレワーク勤務に関する規定を就業規則等に整備。

・テレワークを実施しやすい職場風土作りの取り組みを行う。

・指定した対象労働者が評価期間(3か月)中に一定のテレワーク実績をあげる。

【目標達成助成】

・制度導入助成を受けていること。

・制度導入後の離職率が導入前以下、かつ30%以下であること。

・評価期間(目標達成助成)のテレワーク実績が制度導入時の実績以上であること。

支給額

・制度導入助成:20万円

・目標達成助成:10万円(賃金要件を満たす場合は15万円

2.4. 中小企業団体助成コース

中小企業団体(事業協同組合等)が、構成中小企業の労働環境向上や人材確保を支援する事業を実施する場合に助成されます。

項目

詳細

目的

中小企業団体による構成員企業のための労働環境向上事業を支援。

対象

事業協同組合などの認定組合等。

事業内容

中小企業労働環境向上事業として、以下の事業を実施。

・計画策定・調査事業

・安定的雇用確保事業

・職場定着事業

・モデル事業普及活動事業

・労働環境向上推進員の設置

プロセス

・労働環境向上検討委員会を設置し、事業計画届を労働局に提出。

・計画に基づき1年間の事業を実施。

・事業終了後2か月以内に支給申請書を提出。

支給額

実施した事業に要した費用合計の2/3など、算定式に基づき支給(支給限度額あり)。

3. 建設分野に特化した助成金

建設業における若年・女性労働者の確保・育成、技能継承などを目的として、複数の専門的な助成金コースが設定されています。

3.1. 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース

若年者や女性の入職・定着を図るための取り組みを支援します。事業主単体向けと、事業主団体向けの助成があります。

助成の種類

対象

事業内容の例

助成率・助成額

事業主経費等助成

建設事業主

・現場見学会、インターンシップ等の啓発活動

・新規入職者研修、資格取得講習等の技能向上活動

・安全衛生大会の実施、期間雇用労働者の健康診断

・雇用管理研修、職長研修の実施・受講

・女性向けキャリアパス作成、男性の育休取得促進

中小建設事業主: 対象経費の3/5

上記以外: 対象経費の9/20

・研修受講:8,550円/人日

事業主団体経費助成

建設事業主団体

・上記事業主向け事業の団体規模での実施

・求人合同説明会、集団面接会

・評価・処遇制度やキャリアパスモデルの作成・普及

・女性活躍企業の表彰制度

中小建設事業主団体: 対象経費の

上記以外: 対象経費の1/2

・団体規模(全国、都道府県、地域)に応じた上限額あり

賃金向上助成

事業主経費等助成の支給を受けた建設事業主

全ての建設労働者の賃金を1年以内に5%以上増加させる。

対象経費の3/20を追加で助成。

3.2. その他の建設分野向け助成金(概要)

コース名

目的・概要

トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)

35歳未満の若者や女性を建設現場作業に試行雇用した場合に、通常のトライアル雇用助成金に上乗せして支給。

作業員宿舎等設置助成コース

女性専用の作業員施設(更衣室、トイレ等)を賃借により設置した場合に経費を助成。また、石川県内の工事現場に限定した作業員宿舎等の整備支援も含む。

建設キャリアアップシステム等活用促進コース

CCUSを活用し、技能者のレベル判定に応じた賃金引き上げ(5%以上)を行った中小建設事業主に支給。

人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練/技能実習コース)

建設関連の認定職業訓練や技能実習を実施・受講させた場合の経費や賃金を助成。

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