仕事と育児・介護の両立を支援する「両立支援等助成金」まるわかりガイド
1. 両立支援等助成金とは?
多くの企業様が関心をお持ちの「両立支援等助成金」について、わかりやすく解説します。
この助成金は、厚生労働省が管轄する、中小企業のための支援制度です。その一番の目的は、社員が育児や介護といった大きなライフイベントと仕事を両立できる職場環境づくりを後押しすることにあります。少子高齢化で採用が難しくなる中、働きやすい環境を整えることは、優秀な人材を確保し、定着率を高めるための経営戦略そのものです。
この助成金には、企業のさまざまな取り組みを応援するための、目的別のコースが用意されています。まずは全体像を見ていきましょう。
2. 助成金コース一覧
両立支援等助成金には、企業の課題や目的に合わせて選べる、以下の6つの主要なコースがあります。
コース名 |
主な目的 |
1. 出生時両立支援コース |
男性の育児休業取得を促進する |
2. 介護離職防止支援コース |
仕事と介護の両立を支援する |
3. 育児休業等支援コース |
スムーズな育児休業の取得と復帰を支援する |
4. 育休中等業務代替支援コース |
育休中の社員の業務をカバーする体制づくりを支援する |
5. 柔軟な働き方選択制度等支援コース |
育児中の社員が柔軟な働き方を選べる制度導入を支援する |
6. 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース |
不妊治療や女性特有の健康課題と仕事の両立を支援する |
※「事業所内保育施設コース」は、現在、新規の計画認定申請の受付を停止しています。
3. 各コースのポイント解説
ここからは、各コースの具体的な内容を、3つのポイント(どんな時に使えるか、会社がやるべきこと、助成金額の目安)に絞って見ていきましょう。
3.1. 出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)
どんな時に使える?
- 男性社員が、子どもの出生後8週間以内に育児休業を取得したとき
- 会社全体の男性育休取得率が、前年度と比べて大幅にアップしたとき
会社がやるべきことのポイント
- 研修の実施や相談窓口の設置など、男性が育休を取りやすい環境を整備する。
- 育休取得者の業務の引き継ぎに関するルールなどを決める。
- 対象の男性社員が、子の出生後8週間以内に連続5日以上(うち所定労働日4日以上)の育休を取得する(最初の1人目の場合)。
助成金額の目安
- 例: 最初の男性社員が育休を取得した場合(第1種):20万円(1事業主あたり3人までが上限です)。
3.2. 介護離職防止支援コース
どんな時に使える?
- 社員が家族の介護のために「介護休業」を取得し、職場復帰したとき
- 社員が介護のために「短時間勤務」などの両立支援制度を利用したとき
- 介護休業などを取る社員の仕事をカバーするために、他の社員に手当を出したり、新たな人材を確保したりしたとき
会社がやるべきことのポイント
このコースの鍵は「介護支援プラン」の作成です。対象となる社員と面談を行い、休業の取得から職場復帰までをスムーズに進めるための個別の計画を立て、支援を実行します。
助成金額の目安
- 例: 社員が介護休業を取得した場合:40万円(連続15日以上の休業では60万円)。1事業主あたり5人までが上限です。
3.3. 育児休業等支援コース
どんな時に使える?
- 社員が3ヶ月以上の育児休業を取得したとき
- 育休を取得した社員が、職場に復帰したとき
会社がやるべきことのポイント
このコースを成功させるには「育休復帰支援プラン」の作成が不可欠です。対象となる社員と面談を行い、休業の取得から職場復帰までのプロセスを円滑に進めるための計画を立て、支援を実行します。
助成金額の目安
- 例: 育休取得時・職場復帰時にそれぞれ30万円(1事業主あたり無期・有期雇用者各1名の計2回までが上限です)。
3.4. 育休中等業務代替支援コース
どんな時に使える?
- 育休中の社員の業務を、周りの社員が手分けしてカバーし、その社員に「代替手当」などを支給したとき
- 育児のために短時間勤務制度を利用する社員の業務を、周りの社員がカバーし、手当を支給したとき
- 育休中の社員の代わりに、新たな人材を雇用(または派遣で確保)したとき
会社がやるべきことのポイント
休業する社員の業務をカバーするための社内体制を事前に準備することが重要です。業務内容の見直し、代替する社員への手当支給に関するルールの策定、そして実際にその支援を提供することが求められます。
助成金額の目安
- 例: 周囲の社員へ手当を支給した場合(育休):業務体制の整備に6万円 + 支払った手当の3/4を助成(ただし、手当助成の上限は月10万円)。
3.5. 柔軟な働き方選択制度等支援コース
どんな時に使える?
- 育児中の社員のために、国が定める複数の柔軟な働き方の制度を導入し、実際に社員がそのいずれかを利用したとき
会社がやるべきことのポイント
- フレックスタイム、時差出勤、テレワークなど、国が定める柔軟な働き方の制度を2つ以上導入し、就業規則に定める。
- 社員と面談し、制度利用を支援するための「育児に係る柔軟な働き方支援プラン」を作成する。
- 対象社員が、導入した制度のいずれかを利用する。
助成金額の目安
- 例: 制度を2つ導入し、社員1名が利用した場合:20万円(1事業主あたり1年度につき5人までが上限です)。
3.6. 不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース
どんな時に使える?
- 社員が不妊治療と仕事を両立するとき
- 女性社員が月経に伴う症状への対応と仕事を両立するとき
- 女性社員が更年期の不調への対応と仕事を両立するとき
会社がやるべきことのポイント
- 不妊治療や女性の健康課題に対応するための休暇制度や両立支援制度(時差出勤、テレワークなど)を就業規則に定める。
- 社内の相談窓口となる「両立支援担当者」を選任する。
- 対象の社員が、整備した制度を1年以内に合計5日(回)以上利用する。
助成金額の目安
- 例: 不妊治療との両立支援を実施した場合:30万円(不妊治療・月経・更年期の各支援で、それぞれ1事業主あたり1回限りの支給です)。
このように、両立支援等助成金には様々な場面で活用できるコースがありますが、どのコースにも共通する大切なルールがあります。
4. 申請前に知っておきたい共通の重要ポイント
どのコースを検討する上でも、以下の3点は必ず押さえておきましょう。
- 対象は中小企業のみ これまで紹介した全てのコースは、中小企業の事業主だけが対象です。企業の規模(資本金や従業員数)によって定義が決まっていますので、自社が該当するか事前に確認しましょう。
- 就業規則への規定が基本 多くのコースで、支援制度に関する内容をあらかじめ労働協約や就業規則に定めておくことが求められます。社員から利用の申し出がある前に、準備を済ませておくことが成功の鍵です。
- 「プラン」の作成が鍵 多くのコースでは、支援対象となる社員と面談し、個別の支援プランを作成することが求められます。これにより、社員一人ひとりの状況に合わせた、きめ細やかな支援が可能になります。
5. まとめ:はじめの一歩
「両立支援等助成金」は、中小企業が働きやすい職場環境を整え、貴重な人材の定着を図るための非常に強力なツールです。まずは自社の状況を振り返り、どのコースが課題解決に役立ちそうか検討してみてはいかがでしょうか。
助成金の要件や申請様式は年度ごとに改定される可能性があるため、本ガイドはあくまで全体像の把握にご利用いただき、申請の際は必ず公式サイトで最新の『支給申請の手引き』をご確認ください。より詳しい申請手続きや申請書の様式については、下記公式サイトで最新の情報をご確認ください。
公式サイト: 厚生労働省ホームページ「両立支援等助成金のご案内」 URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html